ちいさなせかい 「お兄様…」 「ナナリー…いいのか?」 アメジストと称される兄の瞳より若干色の薄いナナリーの瞳。 もう二度と見ることはできないと思っていたその美しい宝玉をルルーシュは見つめる。 「お兄様、お兄様を愛しています」 ナナリーもルルーシュの瞳を見つめ返す。 紅き王の力が宿る瞳。 ナナリーはその力を実際に見たことはない。 全ては長兄シュナイゼルからの刷り込み、そう聞かされただけである。 だが、そんなことは些細なことにすぎない。 ナナリーにとって大切なのは、今、自分の目の前に最愛の兄がいること。 母を亡くしてからは身体の不自由さもあり、一日と離れたことがなかったと言っても過言ではなかった大切な兄。 それが、皇女に戻ってからは二年近くも離れていた。 今、直接再会して伝える言葉はこれだけ。 「お兄様、ナナリーはお兄様のものです」 「ナナリー」 全ては妹のための世界を作るため。そのためだけに破壊の魔王、創造主と呼ばれる覇王になった男は、車椅子に乗った最愛の少女に口づける。 それが最大の禁忌だと知りながら。 「愛してる、ナナリー」 「お兄様」 月明かりだけが差し込む部屋で、二人の兄妹の白い身体が寝台に浮かび上がる。 「…今のお兄様はどんなお顔なんでしょう、とずっと想像してました」 「どうだったんだ?」 「はい、想像通りとても素敵でかっこよくて、自慢のお兄様でした」 「はは、ありがとう。ナナリーの瞳もかわいいよ」 「お兄様がいらしてくだされば、私はそれだけで良かったんです」 「ナナリー」 それだけで、よかったんです、本当に。 心の内でナナリーは呟く。 お兄様はご存じなかったかもしれませんが。(fin) ------------------------------------------------------- R2 23話〜24話辺りで書いていたもの。 …まさかこれが黒ナナリーパラレルじゃない、ナナリーの本心暴露になるとはこの時点では思ってなかったんだよ。。 |