空の邂逅



コツ、コツ、コツ…
一歩づつ、足音が近づいてくる。


(あの時と同じ。)

あの時もここと同じような空中庭園の中だった。
そしてあの時と同じく私一人。

(違うのは…)

手に持った『鍵』を確認するように強く握りしめる。

もう分かっている。
私がこの足音と気配を間違えるわけがない。
そう、あの時もきっとわかっていた、私は。
(ゼロはお兄様だった)
わからないふりをしていただけで。

(もう、眼を背けるのは止めると決めました)

覚悟をきめ、息を吸い込む。

「お兄様、ですね」

「そうだよ」

歩みを止めずにまっすぐに私に近づいてくる、最愛のお兄様。
行方不明になったと聞かされたときは、世界が終ったような気さえした、私の世界そのものだった人。

…そして、優しすぎるが故に世界の悪を一手に引き受け、自らを犠牲に私のための優しい世界を作ろうとしてくださった方。
お兄様は否定なさったけれど、それすらも優しい嘘なのだと思う。
それほどに優しい、優しすぎる愛すべきお兄様。

ならばわたくしは。

「お兄様の目的は、このダモクレスの鍵ですか?」
「ああ。それは危険なものだ、お前には」


予想通りの答え。
優しいお兄様。
動けない私をずっと鳥籠に飼っておくことで、危険から遠ざけようとしていた優しくて…残酷なお兄様。

「だからです」
「えっ?」

また、予想通り。
鳥籠の鳥が反逆を起こすなんて、考えてみたこともないのでしょう?


「もう、眼を背けてはいられないから」

気が付いていた。
私は本当に眼を背けていただけ。
汚いものは見なくていいよ、と庇ってくれた手があったから。
甘えていただけだった。
いつでもそこに答えはあったというのに。

私は、ゆっくりと瞼を開く。
ずっと開かないと『思いこんでいた』瞼を。

「お兄様、私にもギアスを、使いますか?」 (be continued to TURN 25)



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