仮面の下の混乱

私は最近なんかおかしいんだと思う。
そう、あの人…ゼロ=ルルーシュが戻って来てから。

待ち続けた敬愛する人の正体は、実は憎たらしいクラスメートで。
それを知っててもやっぱり戻ってきて欲しくて、大きな犠牲を払ってまで取り戻した彼はやっぱりゼロなのにルルーシュで。
そんなところはすごく卑怯だと思う。
私がどうしていいのか迷ってしまうくらいに。


「カレン、どうかしたか?」
「別に。何も」

卜部さん亡き今、黒の騎士団でもゼロの正体を知っているのは私とC.C.の二人だけ。
私とルルーシュの二人しか部屋にいない今は、ルルーシュは仮面をつけていない。

「『ゼロ』に向かって、随分冷たいんだな」
「!!い、今のはルルーシュに言ったんでしょ!」
「フッ、まあいいさ。選んだのは君だ」
「……!!失礼しますっ!!」

絶対意地が悪いわ、この人。
嫌味たらしく礼をして、くるりと扉の方にきびすを返してやる。

「カレン。体調が悪いなら無理をするな。君は我々の…私の切り札だ。無理をして何かあっては困る」

失敗した。
なんでいきなりそんなこというのよ。うっかり足止めちゃったじゃない。

相手はルルーシュ、なのに。

「だ、大丈夫です。ご心配なく」

なんで私、こんなにどきどきしながら答えてるのよ?
ていうか、今、『私の』切り札って聞こえたような気がするんだけど??

混乱している間に、背後でルルーシュが立ちあがったような気配がする。

「それならば良い。君は時々無茶をするから。…心配になる。突然いなくなってしまうのではないかと」

な…んか、今、ありえないセリフが、ありえない至近距離で聞こえたんですけど。
気のせい…じゃない、よね?
と思った瞬間、手をひかれて彼の胸の中に閉じ込められていた。

「カレン」
「ちょ、ちょっとルルーシュ、どういうつもり?」

いつもと様子が違うルルーシュに、私もなんとなくいつものように強気で振りほどくことができない。
体力的なことで言えば、絶対ルルーシュには負けない自信はあるけれど。

(だって、ルルーシュはゼロで、ゼロはあこがれの人で、だからうれしいような…でもゼロはあの憎たらしいルルーシュで…ってえええええ???)

混乱中。

「信じていいんだな?」

ふるえてる。
わかってしまった。
この人、怖いんだ。
あんなに冷酷で容赦ない戦略を立てるのに。
今までもずっと、犠牲を出すのをこれほどに恐れていたんだろうか?
みんなを傷つけないために冷たさを演じて、その分自分が傷ついてきたんだろうか?
あの仮面の下で。

答えが見えた気がした。そして悩んでいた自分の答えも。

だからそろそろと手を伸ばして彼の背中にまわしてみた。
…マント邪魔。だけどなんとなくそのあたりに。

「大丈夫よ」

ルルーシュがびくっと反応する。
なんかおかしくなってきちゃったから、その心に素直に従ってくすっと笑ってみる。

「っ!何がおかしいんだ?」

うろたえるルルーシュの、本物の宝石より綺麗なアメジストの瞳を見つめながら、私は不思議に静かな心で言葉を紡ぐ。今まで悩んでいたのが嘘みたいに。

「大丈夫。私はどこにもいかない。ずっとあなたを護り続ける。決めたから。もう迷わないって」
「カレン…」
「だって、あなたがゼロだもの。そして私はあなたの親衛隊長、でしょ?」
「…ああ、そうだな」
「あなたは私にまだ隠してることがいっぱいありそうだけど、無理に聞くのはやめておくわ。いつか話してくれるんでしょ?」
「…時が来ればいつかは」
「ならいいわ。信じるわ。だからあなたも私を信じて」
「…ありがとう、カレン」

なんとなくそうしなくてはいけない気がして、瞳を閉じた。

彼とキスを交わすのは不思議な気分だった。

ああ、そうか、これは誓いのキスなんだ。
私とルルーシュの契約。
ギアスによる一方的な命令ではなくて、私が望んで結んだ神聖な誓い。

いつか、これが恋人同士のキスに変わることがあるのかもしれないけれど、今はこれが相応しい。

(って、思ってるのになんでこんなにドキドキしてるのよ、私っ!)

契約はいま新たに始まったばかりだった。(fin)


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R2 2話で死ぬほど萌えたので、こうなりましたが。
7話でオフィシャルが(…)な展開になりました(爆)
いやっ!いつかはこの萌えが満たされると信じてる!!
(ルルカレ萌えの妄想もとい暴走)

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